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こんにちは、画家の佐藤功です。
静物画を描く際、背景の描き方は
悩みどころではないでしょうか?
背景は、
主役のモチーフと同じくらい
重要な要素です。
この記事では、
静物画の背景を、どのように描けば
モチーフの魅力を引き立たせられるか、
そして色選びが
作品にどのような影響を与えるか
について解説します。
名画を例にあげながら、
様々な背景の描き方について
詳しく見ていきます。
静物画の背景の描き方の
参考になれば幸いです。
目次
<あわせて読みたい>
背景の役割と重要性
静物画の背景について
単に余白を埋めるためのものではなく、
モチーフをどのように見せるか
どのように引き立たせるか
重要な要素になります。
背景の描き方によって、
作品全体の印象が大きく変わるのです。
美術学校などで課題として描く静物画では、
背景も、そのまま描くことが多いです。
これはモチーフの位置関係や空間を
把握するための練習の意味があるからです。
しかし、オリジナル作品を描く場合は
必ずしも背景をそのまま描くことが
良いとは限りません。
モチーフの魅力をどう見せたいか
どういう絵の雰囲気にしたいか
などによって、
背景の描き方や、色の選び方が
大きなポイントになります。
それでは、
具体的に歴史上の名画を
取り上げて、背景の描き方を
見ていきます。
強く鮮やかに魅せる|色相の対比
色相の対比を利用することで、
モチーフの色彩を鮮やかに
引き立たせることができます。
特に、対照的な色を組み合わせることで、
視覚的なインパクトを
強める効果があります。
例えば、ゴッホの「アイリス」では、
アイリスの青さと、背景の黄色とで
強烈なコントラストを作り出しています。
この対比によって、
花の鮮やかさが一層際立ち、
見る者の目を惹きつけます。
色相の対比を生かすことで、
作品に力強さと、
さらに強い情感をも表すことが
できそうです。
次は、下図のマティスの「マグノリアのある静物」です。
背景の赤により、各モチーフの色彩が
対比されて、より強い色彩を感じますね。
ただ、補色関係に近い色を
組み合わせると
激しい印象になるので
自分がどういう雰囲気の絵に
したいのかを
しっかり意識する必要があります。
もし、モチーフを穏やかに
引き立たせたいのであれば
背景に対象的な色を使いつつ
鮮やかさを抑えるとよいです。
例えば、
セザンヌ「玉ねぎのある静物画」のように
玉ねぎとテーブルの赤茶色に対して、
背景の壁の色は、対照的な青系ですが
鮮やかさを抑えた、ブルーグレーになっています。
荘厳に強く際立たせる|明暗の対比
明暗の対比を用いることで、
モチーフを荘厳かつ力強く
際立たせることができます。
特に、明るいモチーフと暗い背景との対比が
過去の名画でも良く見られます。
さらに、モチーフの一部を
背景の暗さに、溶け込ませるようにすると、
自然な明暗のコントラストとなり、
モチーフに立体感と存在感を
際立たせる効果があります。
そのわかりやすい例が、
ウィレム・カルフの「静物画」です。
光が当たる部分と影の部分が鮮明ですが、
モチーフの一部が背景に溶け込むように
描かれています。
これにより
画面全体に重厚感が生まれ、
モチーフが強く荘厳な雰囲気を持つ
作品へと昇華されています。
色で雰囲気を作る|色選びのポイント
モチーフや背景の色選びを
どうするかによって、
作品全体の雰囲気を決定づけます。
色が持つイメージや、感覚的な影響を理解し、
適切に選ぶことで、
自分が意図した雰囲気を
作品に持たせることができます。
色の心理効果の例として、
色の持つイメージには
次のようなものがあります。
ただし、
個人の経験、国や文化などの違いにより、
同じ色でも、すべての人が
必ずしも同じイメージを持つとは限りません。
色の持つイメージ
「赤」 生命力,情熱,熱い,危険
「オレンジ」 活力,陽気,暖かい,楽しい
「黄」明るい,躍動,目立つ,注意
「緑」若い,さわやか,安全,平和
「青」さわやか,寒い,静か
「紫,灰色」 高貴,大人,おしゃれ,上品,
「ピンク」 女性的,愛情,柔らかい,甘い,かわいい
「茶」 落ち着き,地味,渋い,大人
「白」 純粋,清潔,癒し,軽い
「黒」 暗い,重い,強さ,高級
また、色のもつ感覚的な影響には
次のようなものがあります。
色のもつ感覚的な影響
・赤,オレンジ,黄などの暖色は、暖かく感じる
・青,緑などの寒色は、冷たく感じられる
・暖色は、近くに感じる
・寒色は、遠くに感じる
・明度が高い(明るい)と柔らかく感じる
・明度が低い(暗い)と硬く感じる
・明度が高い(明るい)と大きく感じる
・明度が低い(暗い)と小さく感じる
・明度が高い(明るい)と軽く感じる
・明度が低い(暗い)と重く感じる
・暖色系の鮮やかな色は、興奮感を与える
・寒色系の淡い色は、沈静感を与える
例えば、ゴッホの「向日葵」では、
向日葵も背景も
鮮やかな黄やオレンジで塗り込まれており
活力のある雰囲気と
向日葵の躍動感と生命力、
ゴッホの情熱までも伝わるようです。
一方で、モランディの「静物」では、
近接した緊張感ある
モチーフの配置がされていながら
グレー調で、淡い色彩により、
静謐で落ち着いた雰囲気を醸し出しています。
これらの作品を見て、
色が作品の雰囲気や感情を表現する
強力な要素になりうることがわかります。
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質感で力強さと深みを|マチエールを加える
絵は、形態や色彩だけではなく
意識的に絵肌の質感(マチエール)を加えることで、
絵に強さと深みを与えることができます。
マチエールとは、
絵の表面に施される質感のことですが、
油絵では、特に絵の具を
厚塗りして作る
凸凹の質感のことをいいます。
視覚的、触覚的なインパクトを
与える効果があります。
マチエールによる質感表現が
優れた作品の一つに
シャルダンの「銅製貯水器」があります。
この絵画では、銅の硬さや冷たさが
リアルに再現されており、
そして、背景の壁も
貯水器に負けないくらい
絵の具が塗り込められています。
叩くと硬そうな感じですね。
このように、
絵の表面に細やかな筆使いと同時に
マチエールを加えることで、
物体の重量感や質感、
背景の壁の抵抗感が感じられます。
このように背景も含めて、
マチエールを活用することで、
絵全体に力強さと存在感、深みが出てきます。
一方、モランディの「静物画」は、
シャルダンとは異なるアプローチで
マチエールを活用しています。
モランディの作品は、
淡く控えめな色調と
シンプルな形状が特徴です。
個々のモチーフの
陶器や銅器、ランプなどを見てみると
質感の違いは、それほど描き分けてはいません。
一見地味で、物足りない絵に
見えてしまいそうですが、
画面全体には、絵の具を盛り上げて
モチーフも背景も
均質な質感を、慎重に施しています。
これにより、
画面全体を調和させながら、
なんとも言えない
穏やかな強さと
静謐な深み感じさせています。
ごくシンプルな絵でありながら
このように感じるのは、
確実にマチエールの効果といえます。
一瞬で視線集中|粗密で視線誘導する
粗密の対比を用いることで、
見る者の視線を自然に
モチーフへと集中させることができます。
粗密の
「粗」は、まばらなこと、
「密」は、細かいこと
です。
高島野十郎の「洋梨とブドウ」では、
「粗」である、すっきりした背景と、
「密」である、細かい洋梨とブドウ
の密度の差が、巧みに利用されています。
視線が自然と「密」の洋梨とブドウに向かいます。
「粗」である背景がシンプルであればあるほど、
「密」である洋梨とブドウが強調され、
一瞬で視点が集まります。
逆に
「密」を背景にして、
「粗」をモチーフにしても
この効果は成り立ちます。
粗密の効果は、
画面全体で、「粗」「密」の面積が小さい方に
視線が誘導されます。
上の右図のパターンは、
クリムトの「ひまわり」で見られます。
背景の葉っぱが「密」
モチーフのひまわりが「粗」
これにより、「粗」のひまわりに
視線を集中させることができます。
クリムトの人物画も含めた
多くの作品で、
粗密で視線誘導する手法が
使われています。
意味深い絵|シンボリックな脇役を配置する
絵画に、「シンボリックな脇役」
つまり、意味づけされた要素を
配置することで、作品に
物語性やメッセージ性といった面から
深みを加えることができます。
ヤン・ブリューゲルの
「青い花瓶の中の花束」では、
背景に配置された脇役の蝶が、
キリストの復活を象徴する
要素として機能しています。
この手法は、ヴァニタス画(※)で
よく見られます。
このように、
モチーフや背景の一部に
シンボリックな脇役を加えることで、
色、形、質感のような視覚的アプローチとは違い
物語性やメッセージ性で
作品に深みを与えることができます。
(※)ヴァニタス画については、次の記事中で詳しく書いています。
まとめ|描きたい絵に合わせて背景を考える
油絵の静物画の背景について
描き方や色選びの解説をしましたが、
いかがだったでしょうか。
これ以外にも、まだまだ沢山の
背景処理の手法がありますが、
まずは、やりやすいものを
取り上げました。
大切なのは、
自分が、どのような絵を描きたいのか、
その目的に合った雰囲気、背景を考えて、
手法を選ぶことです。
例えば、
自分の心情を乗せて
強い色相や、明暗対比を使って
モチーフを表現したいのか
あるいは、
モチーフ自体の存在感を際立たせたいから、
マチエールを加えて
力強く重厚な深みを出したいのか
描きたい絵のイメージによって、
モチーフと背景の関係は異なります。
そして、これらの背景処理の手法は
1つだけで活用するのでも良いですが、
できれば、複合的に使ってみてください。
例えば、前述の
ヤン・ブリューゲルの
「青い花瓶の中の花束」では、
背景に蝶というシンボリックな要素の配置に加え、
花と背景で、明暗の対比もされています。
このように複合的に活用して
独自の世界観が表現されています。
最後に、静物画を描く際は、
モチーフをセットする段階から
背景をどうするかを
明確にするとよいです。
背景は、ただの補完的な要素ではなく、
モチーフと同様に絵の一部として
重要な役割を果たすからです。
絵を描きながら試行錯誤して
背景を創り上げるのもよいですが、
できるだけ、後回しにしないで、
最初から背景を含めた
作品の完成イメージを考えることを
おすすめします。
最初に、作品の完成イメージを強く持ち、
モチーフのセット段階で背景も含めて
完成イメージに近い状態に
しておくと、制作がスムーズです。
最後にお知らせです。
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