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こんにちは、画家の佐藤功です。
今回は、絵画の構図について、
記事を書きたいと思います。
絵を描く上では、
「構図」に比べて、「描写」の方が
重要な印象があると思います。
でも、「構図」と「描写」は、
車の両輪のようなもので、
両方を的確に表現することで
作品が、生きてくるのです。
どういうことかと言いますと、
絵画において、構図とは、
鑑賞者が、最初に目にする重要な要素です。
構図が的確だと、観た人を一瞬にして、
作品の世界に引き込むことができます。
ですので、
作品内のモチーフの一つ一つや、細部の描写より、
まずは、構図が重要であると言えます。
構図により、作品に引き込まないと
鑑賞者は、その後、作品内のモチーフの一つ一つや、
細部の描写までは、気にかけては見ないのです。
少し大げさに言っていますが、
つまり、絵は、見た瞬間に何が描かれているか
理解させれば良い、ということです。
それでは、どうすればよいのでしょうか。
絵画の構図の考え方について、
作品内の視線誘導も含めて
説明していきます。
そして、
私が、これは良いと思った
様々な構図パターンを
厳選して10種類紹介します。
この構図の記事には、前編と後編の【1】【2】があります。
本記事は、前編の【1】ですが、読んだら、
後編の【2】も読んでみてくださいね。
目次
<あわせて読みたい>
絵画における構図の役割
絵画において構図は、
単なる配置決め以上の役割があります。
構図は、観る人に
作品中で何を見せたいのか、どう見せたいのか
伝えたい印象やメッセージなど、
構図を効果的に活用すれば、
これらを、瞬時に理解してもらうことができます。
そして、優れた構図は、
観る人の感情に大きな影響を
与える重要な要素です。
観る人が
何が描かれているの?
これはどういうこと?
など、作品の鑑賞時に迷っていると、
その間に、気持ちは冷めていくと思います。
構図は、鑑賞者に対して、
作品への最初の入り口として
重要な役割があります。
構図の考え方、組み立て方
では構図を、
どうやって考えて、組み立てるのか解説します。
まず、構図を考える際には、
基本的なパターンが様々あるので、
それらを活用するとよいです。
パターンは、
三角構図、三分割構図、対角線構図、日の丸構図、、、
など、様々あります。
これらパターンの、線や交点、面に沿って、
モチーフの配置などの、
構図を考えるということです
これらの中で
代表的なパターンの
初心者でも簡単に活用できる
「三角構図」
で構図の組み立て方を解説します。
三角構図は、
キャンバス上に、三角形を描くように
モチーフなどの要素を配置する構図です。
この構図を活用することにより、
三角形の特性である
安定感とバランスを作品に与える
ことができます。
絵画では、特に静物画や風景画で
よく用いられますが、
多くの写真、デザインなどでも見かける
使いやすい構図です。
正三角形、二等辺三角形、直角三角形、不当辺三角形、逆三角形
など様々な三角形を用いることで、
安定感の中に、動きやバリエーションを
持たせることも可能です。
構図パターン「三角構図」を使って組み立てる
それでは、具体的に
構図をどのように考えて、組み立てるのか
シャルダンの「赤エイ」
を例に、
私が、シャルダンは
どう考えて、どう構図を決めて
制作したのだろう?
とシャルダンの気持ちになって(笑)
制作シュミレーションをしました。
それを元にして説明します。
構図パターンの決め方
描きたい作品の主題や
モチーフの特性、モチーフ数、
どう見せたいかなど
それらを考慮して、構図パターンを選ぶ。
・主役の赤エイを1番強く見せたい
・モチーフが多数ある
・モチーフの大半は、生命のない静かなもの
・赤エイ、貝や魚などの食材は、かつて生命のあったもの
・脇役のネコのみ、現在、生命があるもの
・水差し、鍋などの食器類、布は無生物
これらを考慮して、動きのある構図より、
静かな安定した構図が望ましい。
細々したモチーフが多いので、
ヨコ構図が配置しやすい。
エイの頭部の形が、三角の角に近いことも考慮する。
よって、二等辺三角形の三角構図(ヨコ)に決める。
モチーフの配置の決め方
主役の赤エイを、1番強く見せたいので、
三角形の上の角に沿って、
画面のほぼ中心に配置する。
2番目に見せたい、脇役の猫は、
三角形の左の角あたりに配置する。
そのあたりに、貝や魚などの食材全般を
広げるように配置する。
3番目に見せたい、無生物である
水差し、鍋などの食器類、布は
三角形の右の角あたりに
広げるように配置する。
2番目の生物グループと、
3番目の無生物グループを
画面の左右を分けて、対称的に配置して、
画面の安定感を強調させる。
もし、画面に少し動きを出したい場合は、
不等辺三角形の構図パターンにして
モチーフの位置をずらしても良いかもしれない。
不等辺三角形
順番通り見てもらう、視線誘導のポイント
配置したモチーフで
1番に見てもらう赤エイは、
三角形の上の角に沿って、ほぼ中心に配置したが、
さらに、視線を集めるために、
・大きく描く
・明度を高くする
・彩度が高い赤系色を使う
・エイの顔をしっかり描く
のようにする。
2番目に見てもらう猫は、
赤エイの次に視線を集めるために、
・周りを暗くして、明度を高くする。
・小さいが、動きを持たせて、毛を逆立てる怒りポーズ?で目立たせる
のようにする。
あと、残り3番目の
水差し、鍋などの食器類、布には
1→2へ視線が向かった後なので、
3へは自然と視線が向かう。
以上ように
構図は、描きたい作品に合わせて
・構図パターンを選ぶ
・鑑賞者に見てもらう順番を決めて、視線誘導する
・視線誘導は、モチーフの大きさ、明度、彩度、色味、特性などを変えて、自然に誘導する
このようにして構図を組み立ててください。
次にこれ以外の、
活用できる構図パターン10選を紹介しますが
ここでお知らせです。
私の画家としての経験から書いた、
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活用できる構図パターン10種類
1.日の丸構図
主題を画面の中央に配置する構図です。
視線が真っ先に中央に集まり、
強い存在感を与えることができます。
しかし、単調になりやすいので、
背景や他の要素とのバランスで
工夫が必要となります。
絵画の世界では、日の丸構図は、
ド真ん中より、少しずらすと良い
と言われます。
下図は、シャルダンの「野苺の籠」
日の丸構図ですが、
野苺の籠を、ド真ん中から、少し右にずらす、
細かいモチーフを、中心から少し散らす、
で、単調になりずぎず、変化をつけています。
背景や台などは、やや単調ですが、
静謐さを演出しているとも言えます。
シャルダンは、このように
日の丸構図、前述の三角構図、
などが静物画に多いです。
安定したシンプルな構図は、
シャルダンの静物画が
参考になると思います。
2.三分割構図
画面を、縦横に三分割し、
交差点にモチーフを配置する方法です。
バランスが良く、自然な視線誘導が可能です。
多くの絵画や写真で用いられており、
初心者でも使いやすい構図です。
下図は、カラヴァッジョの「女占い師」ですが、
若い男女の構図で、
女占い師が、男の手相を見る、と言いながら
指輪をかすめ取ろうとする場面です。
分割線の交点、上2つに
男女の顔が配置されています。
そして、左下の交点に
女占い師の手が
配置されています。
(指輪を、かすめ取ろうとしている手)
このように、バランスがよく
視線を、男女の顔から女の手へと、
誘導がしやすく、
ストーリーも理解しやすくしています。
3.二分割構図
画面を、縦または横に、二分割し、
構成する方法です。
ほとんどが、
横線で、地平線、水平線などで
二分割した風景画に見られます。
静物画でも、
台と壁の境目などで分割する作品が
見られます。
下図は、ゴッホの「緑の麦畑」
ですが、横線の地平線で、上下分割しています。
(若干、地平線が上ですが)
安定して落ち着いた、印象です。
特に風景画に活用しやすくて、
特にモネ、ルノアール、ピサロなど印象派の画家に
良く見れられる構図パターンです。
このパターンの他の作品では、
立ち木など、縦方向の要素を
入れていることが多いです。
4.対角線構図
画面の対角線に沿って
要素を配置することで、
動きや緊張感を強調する構図です。
ダイナミックな印象を表現しやすいです。
下図は、ルーベンスの「キリスト昇架」
ですが、
左上から右下の対角線上に
イエスを昇架させる複雑な動きの
人物が多数配置されています。
それでいながら、瞬時に
イエスを昇架する
ダイナミックな場面であることが
わかります。
これは、背景全般を暗くしながら
イエスの明度を一番高くして、
対角線上の人物も明度を比較的高くし、
赤、青の色彩を入れています。
これにより、視線を
まず対角線上のイエスに、
そして昇架する人物たちに誘導しています。
5.L字構図
画面に、L字型の構造を持たせる構図で、
タテヨコの要素を与えながら
安定感があります。
意外と数多くの絵画で
見られる構図パターンです。
下図は、フェルメールの「ミルクを注ぐ女」ですが、
右上を広く開けて
大きくL字のシルエットに沿って
要素が固まっています。
つまり左側と下側に
要素が固まっているということです。
(人物は、少しL字から外れますが)
他のフェルメール作品にも
このような構図は、良く見かけます。
静物画でも、応用できますね。
6.ジグザグ構図
ジグザグに要素を配置する構図で、
視線を複雑に誘導し、
動きとリズム、複雑さの整理、深み、を表現します。
下図は、ルノワールの「ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会」
ですが、
右奥から、左奥、
左奥から、右手前、
右手前から、左手前と
ジグザグに、照明、来客、イスなど
多くの要素が配置されています。
画面全体は、複雑のようですが、
視線を、奥から手前、あるいは、手前から奥へと
複雑、かつ、一定のリズムで
誘導させることにより、
舞踏会のにぎやかで、楽し気な雰囲気が
感じられるようです。
視線誘導がなければ、
雑然とした印象になると思います。
7.黄金比構図
黄金比とは、自然界で見られる
調和の取れた、次の比率のことです。
古典的な美の基準として
広く使用されています。
1:1.618
黄金比構図は、この比率に従って
要素を分割したり、配置したりします。
これにより、自然な美しさと
バランスを生み出します。
下図は、モネの「日傘をさす女性」ですが、
キャンバスの縦サイズと空部分の比率が
黄金比となっています。
黄金比は、キャンバスを分割するなど
大きい箇所に使うことだけでなく、
複数モチーフ間の距離の分割や、
各モチーフの縦横比など
至る所で使用できます。
8.黄金螺旋構図(フィボナッチ螺旋)
黄金螺旋(フィボナッチ螺旋)とは、
黄金比の長方形から割り出した螺旋のことです。
自然界でよく見られる
美しい曲線を利用した構図パターンです。
この黄金螺旋構図に沿って、要素を配置すると、
視線が、画面全体を流れるように
鑑賞者の視線を誘導します。
黄金螺旋構図は、不思議と視覚的に
心地よいバランスを実現するのです。
下図は、ルーベンスの「キリスト降架」(中央パネル)ですが、
イエスが十字架から降ろされる場面です。
登場人物が多く、ポーズも明暗も複雑ですが、
「黄金螺旋」の中心にイエスの頭部があり、
螺旋の弧に沿って、
流れるように、人物が配置されています。
明暗や色彩を見ても、
螺旋の内側に、白や赤、紺、
など明るく鮮やかな色がまとまって、
背景は、ほぼ暗い色です。
自然に視線が誘導されていきます。
黄金比について、詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
9.内接円構図
画面の辺に内接するように
円を描き、そこに要素を配置する構図です。
要素を整理して、バランスの良い印象を与えます。
特に画面の余白の空き方が
自然になります。
画面上で、要素がカツカツに
に詰め込んだ印象には
ならないということです。
下図は、ラファエロの「キリストの変容」ですが、
画面上半分の、
イエス、2人の預言者、背景の光の雲(光輪?)が
上の内接円に沿って配置されています。
そして画面下半分の、
群衆も、
下の内接円に沿って配置されています。
多数の要素が混沌としているようですが、
この構図パターンにより
画面が整理され、まとまりが出ています。
視線誘導は、
画面上部の高明度のイエスに、
まず視線が向かい、
次に、
イエス周辺の預言者、使徒たち、
そして、
画面下部の明度を落として、色彩が入り混じった群衆に
視線が誘導されます。
10.放射線構図
画面の中心から放射状に
要素を配置する構図です。
視線を中心に集める効果があります。
遠近法(一点透視図法)も、
この構図の一つと言えます。
下図は、レオナルド・ダ・ビンチの「最後の晩餐」ですが、
中心のイエスから放射状に要素が配置されています。
左右に、弟子たちやテーブルが並び、
そして、一点透視図法でいう消失点(=イエス)に向かって
天井や壁のラインが収束しています。
これは、視線を中心であるイエスに
強烈に誘導する構図となり、
絵の主題に適した構図パターンと言えます。
構図パターンは、組み合わせてみる
構図パターンを10選紹介しましたが、
いかがだったでしょうか?
実際の制作では、構図パターンは
1種類だけ使用するよりは
複合的に使うことが多いです。
複合的に構図パターンを利用した例を記載します。
私が描いた作品です。
下図は、私の作品「時の音」ですが
まず三角構図(黄線)で、モチーフの配置を決めますが
それと同時に、ジグザグ構図(赤線)で、
奥から手前にジグザグにモチーフを配置します。
左奥のプルーン→中間の古書→左手前の無花果→一番手前のテーブルの縁
これにより、単純に三角にモチーフを配置しただけでなく
奥行きを強調します。
縦横の広がりと、奥への広がりを持たせて
作品の空間に深みを与えます。
この記事を参考にして
ぜひ実践して見てくださいね。
皆さんが描いている作品の
構図組み立ての一助になったら幸いです。
本記事は、後編の【2】もあります。
ぜひご覧ください。
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