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静物画とは、どのような絵か?描かれる代表的なモチーフは?有名な静物画と歴史

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静物画とは?描かれるモチーフとは?

こんにちは、画家の佐藤功です。この記事では静物画(せいぶつが)について書きます。記事がためになった、面白かったなら、ぜひSNS(Twitter、Instagram、Facebook)のフォローもお願いします。

静物画(せいぶつが)とは、どのような絵のことでしょうか?そして何が描かれているのでしょうか?まず、簡単に説明します。

静物画とは、静止したモチーフを描いた絵画のことです。

モチーフの代表的な例として、自然物では、花、果物、狩りの獲物、食材、など。人工物では、グラス、瓶、陶磁器、本、時計、楽器、などがあります。

また、「静物画」には長い歴史があり、西洋画のジャンルの1つとなっています。

※ちなみに、今の美術教育の現場で静物画は、モチーフの形態や空間、質感などを修練するための課題としても、よく描かれています。

西洋での静物画は歴史が長く、その時代や国、画家によって、描き方、描く内容が違っています。

では、静物画にはどのような絵画があるのか、どのような歴史があるのか見てみましょう。

目次

<静物画とは?描かれるモチーフとは?>

<有名な静物画>
・シャルダン「赤エイ」
・カラバッジョ「果物籠」

・デ・ヘーム「果物籠のある静物」

<静物画の歴史>
・古代ギリシャ・ローマの壁画が最古の静物画
・中世では静物画が消滅?
・ルネサンス頃~静物画復活の兆し
・1600年頃~静物画の確立と隆盛
・ヴァニタス画とは
・18世紀シャルダンの静物画が評価される
・セザンヌの斬新な静物画

<まとめ>

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有名な静物画

ジャン・シメオン・シャルダン「赤エイ」 1728年

18世紀フランスの画家「シャルダン」。庶民の日常的な事物を卓抜した描写力で描く。独特の静けさと温かさがあり、「赤エイ」は王立絵画彫刻アカデミーで評価された。さらに詳しく

カラバッジョ 「果物籠」

   ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラバッジョ「果物籠」(1595年 – 1596年頃)

17世紀イタリアの画家「カラバッジョ」。林檎の虫食いまで描く、精緻な描写力、あるがままをリアルに描く徹底ぶり。さらに詳しく

デ・ヘーム 「果物籠のある静物」

コルネリス・デ・ヘーム 「果物籠のある静物」 1654年

17世紀ネーデルランド(現オランダ・ベルギーあたり)の画家「デ・ヘーム」。この「果物籠のある静物」は国立西洋美術館に収蔵。さらに詳しく

静物画の歴史

西洋での静物画は歴史が長く、古くは紀元前1世紀頃から、途中、中世ではキリスト教美術の影響により、静物画のジャンルそのものが、消滅した期間もありました。

しかし、ルネサンス期あたりから静物画は復活して、ジャンルが確立していきます。静物画は、時代や国、画家によって、描き方、描く内容が違ってきています。

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古代ギリシャ・ローマの壁画が最古の静物画

最古の静物画は、紀元前1世紀頃にさかのぼり、古代ギリシャ・ローマの壁画に描かれています。そこには、果物や狩りの獲物、様々な食材が描かれており、収穫物の豊かさや喜びを称え、富裕層の住宅を装飾するためのものであったようです。このような絵は「クセニア」と呼ばれていました。

下図は、紀元後79年ポンペイの壁画ですが、画面左に林檎と葡萄がたっぷり入ったガラスの器、その右横には、保存食の入った陶器や土器があり、ガラスの器の下にはザクロと林檎が置かれています。

作者不詳 「果物鉢と花瓶のある静物」 紀元後79年

中世では静物画が消滅?

5世紀にローマ帝国が崩壊した後の中世では、独立した静物画は、ほぼ消滅してしまいました。中世では、キリスト教が権威となり、美術も宗教画が中心となったことが影響しています。

下図は、9世紀~13世紀に描かれた磔刑図で、イエスの両脇には、聖母マリアとヨハネ、さらに頭上には天使が描かれています。このような様式化された中世のキリスト教美術をビザンチン美術といいます。静物画の要素は見られないですね。

ルネサンス頃~静物画復活の兆し

静物画の復活の兆しは、キリスト教の文化的支配から抜け出すルネサンス(15世紀頃)頃から、見られるようになりました。それは、宗教画の一部としてですが、静物画の要素が登場します。

実際の作品で見てみましょう。

下図は、ヤン・ファン・エイク 「ヘントの祭壇画」(外翼)ですが、真ん中の右パネルに白いタオル、洗面用具など静物画的要素が見られます。ただ、これは静物画として独立性はなく、聖母マリアの純潔の象徴として、宗教的な意味付けがされています。

ヤン・ファン・エイク 「ヘントの祭壇画」(外翼) 1432年

部分拡大図

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1600頃~、静物画の確立と隆盛

静物画が独立したジャンルとして確立されはじめたのは、1600年頃からですが、特にネーデルランド(現オランダ・ベルギーあたり)を中心として静物画は隆盛しました。

オランダあたりで、静物画が隆盛した要因として、市民層が商業活動により台頭し、芸術の新たなパトロンとして登場してきたこと。さらに、オランダはプロテスタントが主流を占める国家だったため、偶像崇拝は禁止。これにより宗教画の需要が殆ど無かったこと、が影響しています。

描き方の特徴としては、日常の事物のリアルで細密な描写。描かれた内容は、花卉、食卓、厨房(ボデゴン)、ヴァニタス(後に説明)、など多岐にわたります。

静物画が盛んな時期のネーデルランドの画家の作品を何人か見てみましょう。

ヤン・ブリューゲル (父) 「花束」
ヤン・ブリューゲル (父) 「花束」 1600-1625年

ヤン・ブリューゲル (父)は、花瓶に花を生けた静物画、というジャンルを開拓した先駆者の一人とされています。この時期に花卉画は、多くの画家に描かれていますが、およその特徴として、正面から、左右対称的な構図で、多種多数の花、豪華、ということがあげらます。

コルネリス・デ・ヘーム 「果物籠のある静物」
コルネリス・デ・ヘーム 「果物籠のある静物」 1654年

コルネリス・デ・ヘームは、花や果物を題材にした作品を数多く描いています。父や兄弟、親戚なども画家で、デ・ヘーム家は多数の画家を輩出しています。

ちなみに、この「果物籠のある静物」は国立西洋美術館に収蔵されています。「常設展」で実物を鑑賞できるはずですが、展示情報は、念のため確認した方が良いです。

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ウィレム・カルフ 「角製の杯のある静物」
ウィレム・カルフ 「角製の杯のある静物」 1653年

ウィレム・カルフは、豪華さを誇示する静物画の第一人者といわれています。食卓にはオランダの豊かさを誇示するようなモチーフが、これでもか、と並んでいます。地元の海で取れたロブスター、銀細工が施された角製の杯、レーマ杯の高級ワイン、輸入物のレモンやペルシャ絨毯?など。

少し余談ですが、画家として私個人の印象で、「角製の杯のある静物」の構成について優れているところを言いますと。
まず、左上を黒い空間にして、さらに右下になるにつれ明度を暗くしたことで、鑑賞者の視点を中心のモチーフに誘導することができます。

さらに主なモチーフを見てみると、「角製杯」→「ロブスター」→「レモン」の配置が、画面の奥から手前、と同時に上から左下に動きがある構成です。

そして暗い背景から浮かび上がる豪華なモチーフ。これらは構成も魅力的ですが、それだけでなく、独特の静謐な雰囲気を醸し出し、単に豪華なモチーフの描写以上のものを感じます。

ハルメン・ステーンウェイク 「ヴァニタス」
ハルメン・ステーンウェイク 「ヴァニタス」 1640年

「ヴァニタス画」を代表するハルメン・ステーンウェイクの作品です。「ヴァニタス画」とは、静物画のジャンルの中でも有名ですが、どのようなものでしょうか。

◆ヴァニタス画とは
まず、ヴァニタス(vanitas)とはラテン語で「空虚」「虚しさ」を意味しますが、「ヴァニタス画」とは、人生の儚さ、虚栄の虚しさを描いた静物画のことを指します。

描かれているモチーフ(その意味)は、頭蓋骨(死の確実さ)、時計(人生の短さ)、楽器(人生の悦びの儚さ)、枯れた花(老い・衰退)、コイン(富の儚さ)、など。それぞれに意味を含んでいます。つまり、「ヴァニタス画」は、人は確実に死ぬ、時間は有限だから死を忘れずに生きろ、富は死後には持っていけない、などの寓意が込められています。

なぜ、このようなジャンルができたかというと、17世紀当時の静物画は、主に富裕層の好みに応じた贅沢なもので、本物そっくりに描いていましたが、宗教画のように見る者の精神や道徳性、知性を高めるものではなく、静物画は格下に見られていました。

その格を上げるために、キリスト教的な教えをモチーフに置き換えて比喩的に取り入れました。このようにして宗教画に引けを取らないように、高尚な寓意を込めた静物画が描かれました。

しかし、静物画の格は、なかなか上がりませんでした。

※既述の花卉、食卓、厨房などの静物画にも、モチーフに寓意性を持たせている作品は多々あります。

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イタリアのカラバッジョ

ネーデルランド(現オランダ・ベルギーあたり)の画家を紹介しましたが、1600年頃~のイタリア、スペインでも優れた静物画は描かれていました。ただ、カトリックの宗教画が強く、その影響のため、ネーデルランドのような静物画の隆盛は見られませんでした。下図は、イタリアの中でも優れた静物画のひとつ、カラバッジョの「果物籠」です。

ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラバッジョ「果物籠」(1595年 – 1596年頃)

カラバッジョは、聖書や神話に登場するの聖人たちを生身のモデルを通してリアルに描いた画家として有名ですが、このような静物画も描いています。果物や葉は品種が判別できるくらいの精緻な描写、林檎の虫食い、枯れてきた葉の表現など、あるがままをリアルに描く徹底ぶりです。

18世紀、シャルダンの静物画が評価される

18世紀になると静物画は、ヨーロッパのいたるところで描かれるようになります。その中でも、フランスの画家「ジャン・シメオン・シャルダン」は、1728年に下図の「赤エイ」がフランスの王立絵画彫刻アカデミーで評価され、「動物と果物の絵に優れた画家」としてアカデミーの正会員になりました。

ジャン・シメオン・シャルダン「赤エイ」 1728年

シャルダンは、庶民の日常的な事物(食器、食材など)を、卓抜した描写力で簡潔な構図で描きました。17世紀のネーデルランドの画家と比べて、豪奢な画面ではないですが、独特の静けさと温かさがあります。シャルダンの「赤エイ」が王立絵画彫刻アカデミーで評価されたことは、静物画の格上げに貢献しているといえるでしょう。

セザンヌの斬新な静物画

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19世紀のフランスの画家「ポール・セザンヌ」の静物画は、これまでの静物画とは全く違う試みをしました。

これまでの静物画は、いかに実物に迫って、リアルに精緻に描くか、でした。しかし、セザンヌは、実物を無視して、形態・色彩を(感性ではなく)知性で再構築して(デフォルメして)、いかに絵を魅力的にするか、ということを試みました。筆遣いもリアルさ、精緻さとは程遠いものですね。

ポール・セザンヌ 「果物籠のある静物」 1888年

上図は、セザンヌの「果物籠のある静物」ですが、実物ではありえない形態・空間構成にデフォルメされています。ありえない部分を何点かあげます。

・テーブル上の白い陶器の水差し・器が傾いている
・果物籠は横からの視点だが、壺は斜め上からの視点になっている
・テーブルの手前の縁が、布を挟んだ左右で繋がっていない
・前景は暖色(黄、赤、茶など)や白、後景は寒色(青など)で色彩がまとめられてる

このような実物ではありえないデフォルメにより、モチーフごとに(セザンヌにとって)最適な形態と配置がされ、画面全体が不思議な調和が取れて、絵の存在感が際立ってきます。また、前景に進出色(※)である暖色や白を配置したことで、手前と奥行きがより明確になっています。結果、斬新で魅力的な静物画となっているのです。

(※)進出色とは、近くに見える効果がある色のこと→暖色や明るい色。これに対して、後退色は、遠くに見える効果がある色のこと→寒色や暗い色。

このセザンヌの試みは、ピカソやブラックによって考案されたキュビズムの発想の元となり、その後、ピカソらはキュビズムの静物画を数多く描いています。

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まとめ

静物画の歴史は長いですが、初期の頃(1600年頃)は、宗教画、歴史画、肖像画、風景画、と比べて、静物画は一番格が低かったのです。

しかし、セザンヌの試みが、後世のキュビズムやフォービズムに繋がって「近代絵画の父」として高く評価されたこと、さらに印象派が評価されてきた背景もあって、風景画、人物画、と並んで、静物画も独立したジャンルとして評価されるようになりました。

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現在では、私も画家として静物画を制作することはありますが、静物画は格が低いという印象はないですね。少し前の美術品オークション(ロンドン クリスティーズ)になりますが、ゴッホの静物画である「ひまわり」が、1987年に安田火災海上(現・損害保険ジャパン)によって、58億円で落札されています。

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