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ヴァニタス画とは?モチーフの意味と17世紀オランダ静物画の販売戦略

最初にお知らせです。

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こんにちは、画家の佐藤功です。

美術館で静物画を見たとき、
ドクロや虫、消えたロウソク、倒れたグラス、皮を剥いたレモン
などが描かれている作品に出会った
ことはありませんか?

「なぜ、ちょっと不気味なモノが定番に描かれているのだろう?」

と疑問に思った方も多いかもしれません。

実は、そこには単なる芸術表現だけでなく、
画家たちの切実な事情が隠されています。

この記事では、17世紀オランダにおける画家の販売戦略
そこに込められた深い意味について詳しく解説します。

モチーフの意味やその裏側を知ることで
絵画鑑賞が今までの何倍も面白くなるはずです。

この章でわかること
・17世紀オランダで静物画が飛躍的に発展した理由
・画家たちが直面した「パトロン喪失」という切実な事情
ヤン・ステーン「踊るカップル」1663年

17世紀のオランダにおいて、静物画は飛躍的な発展を遂げました。
そこには「美しいものを本物そっくりに描きたい」
という純粋な欲求だけではない切実な理由があったのです。

当時の画家たちがなぜ静物画に意味を持たせたのか、その背景を見ていきましょう。

サトウ
私が17世紀オランダの静物画を初めて見たのは画学生時代でしたが、ドクロなどが描かれていて、暗く陰鬱な印象を持ちました。

「なんでドクロ?虫?倒れたグラス?」と不思議に思いましたが、宗教的な意味や画家たちの商業的な事情を知ると、「なるほどそういうことか」と現代社会にも通じる納得感がありました。

16世紀の宗教改革の影響により、17世紀当時のオランダはプロテスタントが主流となり、
教会内に絵画や彫刻を飾ることを「偶像崇拝」として厳しく禁じました。

同じ17世紀、イタリアなどのカトリック諸国では、
カラヴァッジョやルーベンスといったバロックの画家たちが
教会の権威を示す劇的で巨大な宗教画を次々と描いていました。

偶像崇拝(ぐうぞうすうはい)とは、神仏をかたどった像や絵画などを信仰の対象とすることです。プロテスタントはこれを禁じたため、教会向けの宗教画の需要が激減しました。
ピーテル・パウル・ルーベンス「キリスト降架」1611-1614年

この華やかなカトリック美術とは対照的に、
オランダの画家たちは、最大の顧客であった「教会」というパトロンを完全に失ってしまったのです。

生活の糧を得るために、彼らは新たな顧客である新興の富裕層の市民に向けて
家に飾れるサイズの静物画などを描く必要に迫られました。

彼らが描いた静物画は、主に富裕層の好みに応じた贅沢なもので、豪華で綺麗なモチーフを本物そっくりに描いていました。

画像ウィレム・カルフ「角製の杯のある静物」1653年

しかし、単に綺麗に本物そっくりに描いただけの静物画は、
当時の価値観では宗教画に比べて、ずっと格下とみなされていました。

そこで画家たちは、
モチーフにキリスト教的な道徳観や教訓を重ね合わせるという戦略に出たのです。

「これは単なる物の写しではなく、人生を省みるための高尚な絵画である」
という付加価値をつけることで、市民がこぞって買い求めるようになりました。

これが、「ヴァニタス画」と「ヴァニタス」という静物画のジャンルの誕生となります。
次に、この「ヴァニタス」を詳しく解説します。

ここで、お知らせです。

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この章でわかること
・「メメント・モリ」と「ヴァニタス」の根本的な意味
・「ヴァニタス画」によく描かれる代表的なモチーフの隠されたメッセージ
ピーテル・クラースゾーン「ヴァニタス」1625年

ここからは、キリスト教的な道徳観や教訓を付加価値としてつけた「ヴァニタス」の解説と、「ヴァニタス画」によく描かれる代表的なモチーフとその意味を紹介します。

すべての根底にあるのは、旧約聖書に記載のある
「メメント・モリ(memento mori)は、「自分がいつか必ず死ぬことを忘れるな」というラテン語の警句です。
現世の富や権力は、死の前には無意味であり、今を正しく生きなさいという強いメッセージが込められています。

この思想をベースに表現された静物画のジャンルが「ヴァニタス」と呼ばれ、その「ヴァニタス画」は大流行しました。

ヴァニタス(vanitas)とは、ラテン語で「空虚」(むなしさ)のことですが、
「ヴァニタス画」では、死を前提とした人生の富や名声、美や若さ、知識、悦楽の無意味さを、様々なモチーフと紐づけて視覚的に表しています。

では、「ヴァニタス画」には、どのようなモチーフがあるのか、見ていきましょう。

骸骨は、ヴァニタス画において直接的でわかりやすく、最も代表的なモチーフです。
どんなに権力や富を持った人間であっても、最終的には皆この姿になるという「死の不可避性」を表しています。

美しく咲き誇る花も、時間が経てば必ず枯れ、散っていきます。
「若さや美しさは永遠ではない」という、現世の美の儚さを警告するモチーフです。

砂時計や懐中時計は、刻一刻と過ぎ去っていく有限の時間を象徴しています。

フィリップ・ド・シャンパーニュ「ヴァニタス」1671年頃

骸骨、花、時計、これらの意味を手がかりにして、上の絵画に、どのようなメッセージ・教訓があるのか、謎解きをするように読み解いてみましょう。

・左側に花・・・現世の若さや美しさと儚さ
・中心に骸骨・・・いずれ訪れる死
・右に砂時計・・・人生の時間は有限であること
・3つモチーフを横に等しく並べて、花(生)、骸骨(死)、砂時計(時)は等価であるというメッセージ性を明確にしている

まとめると、
「人生における若さ・美しさは永遠ではなく、必ず死を迎える時の経過とともに」
と読み解くことができます。

火が消えたばかりのロウソクは、あっけなく途絶えてしまう人間の命の儚さを表現しています。

宙に浮いては弾けるシャボン玉は死の唐突さを、薄く繊細なガラスの器は人間の命の脆さ・壊れやすさを示しています。一瞬の美しさの裏にある危うさを、的確に視覚化したモチーフです。

フィリップ・ザウアーラント「ヴァニタス静物画」1709年

骸骨、花、時計、ロウソク、シャボン玉、これらの意味を手がかりにして、上の絵画に、どのようなメッセージ・教訓があるのか、謎解きをするように読み解いてみましょう。

・中心に2つ骸骨・・・いずれ訪れる死(2つの骸骨で強調)
・左上に火が消えたばかりのロウソク・・・あっけなく消える命
・左に砂時計・・・人生の時間は有限であること
・右側あたりに3つのシャボン玉・・・死の唐突さ
・バラの花(生)の下に骸骨(死)・・・生と死は表裏一体

生命を表すバラは、小さく一つだけですが、
命の有限性や死の唐突さを表すモチーフは、2つの骸骨、ロウソク、シャボン玉、砂時計、と強調するようにいくつもあります。

このことからまとめると、
「命は有限であり、死は唐突に訪れる。生と死は表裏一体であることを常に忘れるな、という強い教訓を示している」
と読み解くことができます。

美しい楽器、当時高級品だったタバコ用のパイプなどは娯楽を、分厚い書物は知性を表します。
これらもまた、死後には持って行けない「現世的なもの」の象徴として描かれています。

ダーフィット・バイリー「ヴァニタス静物と肖像画を持つ黒人の少年」1650年頃

横倒しになった高級なグラスは、中身が空であることを示し、悦楽が唐突に終わることを意味します。華やかな宴のあとの虚脱感や、死によってすべてが中断される命の儚さを象徴しています。

鮮やかな黄色いレモンは一見すると非常に美しく、食欲をそそるモチーフです。しかし、その皮を剥けば強い酸味や苦渋が待っています。レモンのモチーフには「外見の美しさや甘い誘惑に安易に飛びつくと、後で痛い目を見る(苦渋を味わう)」という強い警告が込められています。

ピーテル・クラースゾーン「酒杯、レモン、オリーブ、倒れたグラスの静物画」1650年

美味しそうな果物も、時間が経てば必ず腐敗してしまいます。
新鮮な果物は若さを、虫食いや腐りかけは、いずれ訪れる老いや衰退、死を意味しています。

ヨリス・ファン・ソン「倒れた銀の水差しのある豪華な静物画」1660年頃

果物、皮を剥いたレモンなど、これらの意味を手がかりにして、上の絵画に、どのようなメッセージ・教訓があるのか、謎解きをするように読み解いてみましょう。

・画面全体にたくさんの新鮮な果物・・・現世の若さや活力を表すが、その左上に枯れかけの葉、右下に傷みかけたオレンジがある。これらにより、いずれ訪れる老いや衰退を表す
・中心下に皮を剥いたレモン・・・人生において甘い誘惑に飛びつくと苦渋を味わう
・中心左に倒れた銀の水差し・・・富や権力の衰退
・たくさんの新鮮な果物(若さ・活力)と倒れた銀の水差し(富の衰退)を対比させている

まとめると
「人生における富や権力・若さや勢いは、いずれ衰退していく儚いもの。甘い誘惑などに飛びつくと苦渋を味わうこととなり、唐突に凋落していく」
と読み解くことができます。

空っぽの貝殻は中身のない「虚飾を意味します。

ハルメン・ステーンウェイク「ヴァニタス」1640年

蝶はサナギから羽化することから「魂の復活」や「キリストの復活」を意味するポジティブな象徴です。一方でハエは「腐敗」を意味し、昆虫や小動物にも細かい意味付けがされています。

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実は、17世紀オランダのヴァニタス画(静物画)と、それ以前のカトリック宗教画では、同じモチーフでも意味合いが異なる場合が少なくありません。

以前の宗教画におけるモチーフは、聖母マリアの純潔を示す「白百合」のように、聖書の登場人物を特定したり、神を讃えたりするための記号でした。

しかし、17世紀オランダの静物画では、白百合であっても特定の宗教的な意味より「いずれ枯れゆく命の儚さ」といった、一般市民に向けた道徳へと意味がシフトしています。

絵の顧客が「教会」から「市民」へと変わったことで、神に捧げるための意味合いから、絵を買う人の人生観に寄り添う意味合いへと変化したのです。

サトウ
時代や社会的・宗教的背景によってモチーフの意味が違うと戸惑うかもしれませんが、謎解きのように「このモチーフは何を表しているか」と思索するのは、とても面白い体験です。

例えば、
「白百合」と「若い女性や天使」なら「マリアのキリスト教的ストーリー」
「咲き誇る白百合」と「骸骨」なら「ヴァニタス画」
といった具合です。

描かれた時代、国、画家の事情も一緒に考えると、いつのまにか絵画をより深く考察できるようになりますよ。

この章でわかること
・18〜20世紀にかけての静物画の役割の変化
・教訓から解放され、純粋な芸術表現(実験の場)へと移り変わる歴史
セザンヌ「リンゴの入ったかご」1890-1894年

17世紀オランダで完成されたヴァニタス画と呼ばれる「意味を読む静物画」ですが、時代が進むにつれてその役割は大きく変化していきます。
絵画が「教訓を伝える道具」から解放され、画家独自の「純粋な芸術表現」へと昇華していく過程を見てみましょう。

サトウ
17世紀オランダのヴァニタス画は魅力的な作品が多いですが、人生の教訓を伝える道具として捉えてしまうと、画家側としても、鑑賞者側としても、少し窮屈な気がします。
その反動のように、18~20世紀にかけて静物画は教訓を伝える役割から解放され、画家ごとに多様かつ独自な表現の追求へと変遷していきました。
シャルダン「キッチンテーブル」1755年頃

18世紀フランスの画家シャルダンは、静物画から重苦しい教訓を薄れさせました。
彼は台所の銅鍋や食器、食材といったありふれた日常の事物を、華美も誇示もせず淡々と描いています。

銅鍋の鈍い光や、陶器の艶感、死んだ魚のヌメり感など、質感や光の美しさそのものを追求していったのです。

セザンヌ「静物」1895年-1900年

19世紀末のセザンヌに至ると、モチーフが持つ意味は完全に無くなります。
彼にとってのリンゴは、宗教的な意味も人生教訓も持たず
色彩や形態、構図を探求するための「動かない実験材料」へと変わりました。
つまり、モチーフは、画家が自分の新しい視覚表現を徹底的に試すための道具となっていったのです。

その後、セザンヌの表現はピカソによってキュビズムへと発展し、よりモチーフが持つ意味どころか、形態自体も曖昧になっていきました。

ピカソ「コンポートとグラスのある静物」1914-1915年
モンドリアン「Tableau no.2」1914年

さらに20世紀のモンドリアンになると、ついに現実のモチーフすら画面から姿を消します。
静物画を極限まで抽象化した結果、垂直線と水平線、三原色による純粋な秩序のみが残る世界へと到達しました。

もちろん「純粋な造形美」や「画家の実験の場」は、美術史的に目を引く静物画の変遷ですが、それだけでなく、静物画には多様な表現が見られます。

ルドンのように幻想的・神秘的な表現、印象派の画家たちのように光と色彩を捉える表現。
現代でも、ヴァニタス画を描く画家もいれば、本物そっくりな描写を徹底的に追及する画家もいます。

<合せて読みたい>
静物画と、その歴史について、詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください

今回は、17世紀オランダの静物画に隠されたモチーフの意味と、画家たちの販売戦略、そして近代にいたるまでの変遷をざっと解説しました。
当時の画家たちが直面した「パトロンの喪失」という現実的な危機が、結果的に「ヴァニタス」という奥深いジャンルを生み出したのは非常に興味深い歴史です。

サトウ
「ヴァニタス」誕生のきっかけは、画家たちの高尚な精神からということではなく、経済的に必要に迫られてというのが、リアルな人間味が感じられますね。

私自身、描く側の考えとしては、表現のきっかけや意図は、高尚で志高くであっても、やむを得ない事情からでも、野心や功名心からでも、何でもかまわなくて、結果的に魅力的な作品を生み出して、人や社会の役に立つことに意義があると思っています。

そして、時代が進むにつれてモチーフの意味は消失し、静物画は「純粋な造形美」や「画家の実験の場」へと姿を変えていきました。

次に美術館を訪れる際は、ただ美しい絵として眺めるだけでなく、「これは誰に向けて、どんな意図で描かれたのだろう?」と、時代背景や画家側の事情まで想像してみてください。

これらの知識を持つことで、何百年も前に描かれた骸骨やグラスから、メッセージを読み解く面白さを味わい、美術の教養をさらに深めることができるはずです。

まとめ
・17世紀オランダの静物画は、パトロンを失った画家の「生き残り戦略」だった
・モチーフには「メメント・モリ(死を想え)」の教訓が込められている
・時代が進むにつれ、モチーフの意味は消え「純粋な造形美」へと変化した


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