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油絵のオイル(溶き油)の種類と使い方を簡単に解説!初心者におすすめの溶き油とは

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こんにちは、画家の佐藤功です。

今回は、油絵を描く時に
使うオイルについて解説します。

油絵の「オイル」
「溶き油」「画用液」とも言われます。
(記事中では「溶き油」「画用液」とも記載します。)


油絵をやってみたい、と考えている人は、
この画用液の種類の多さ、難解さが、
一番のハードルになっている
のではないでしょうか?

この記事では、画用液について、
初心者でもわかるように
できるだけ簡単に解説します。

そして、初心者でも簡単に扱える
おすすめの画用液も紹介します。


記事中のすべての画用液は
私が画家として
過去に実際に使ってみました。
解説には、私独自の見解も書いています。

<あわせて読みたい>

絵を描く時に、

水彩絵の具は、
絵の具の中の水分が蒸発して、
乾燥します。

これに対して、
油絵の具は、
絵の具の中の油分が、
酸素と結合(酸化重合)して、
液体から固体になることで
絵の具をキャンバスに固着させて
乾燥となります。

油絵の具の乾燥には、長い時間を要します。
指触乾燥(表面の乾燥)でも2~5日ほど。


このような特性のある油絵の具ですが
様々な画用液を使うことにより、

絵の具を溶いて描きやすくしたり、
絵の具の固着を良くしたり、
乾燥を速めたり、
光沢を調整したり、
完成後の画面を保護したり、


油絵を描く上での、
描きやすさや、
絵のクオリティを高めることに
役立てることができます。

油絵の画用液は、
基本的に5種類に分類できます。
それぞれに前述した役割があります。

多種多様に存在する
画用液のほとんどは、
これら5種類のいずれかになります。

ですので、この5種類を
理解しておけば、
ほとんどの画用液が
どういったものか、わかると思います。

では、5種類を詳しく説明します。

乾性油は、
油絵の具を固着させる画用液で、
油絵を描く時、メインのオイルとなります。


使う比率が高いと
キャンバスへの固着を強くして
絵肌に光沢がでます。
ただ、そのまま使用すると濃いので、
揮発性油で適宜薄めて使用します。

乾燥後の塗膜は丈夫で、
油に再溶解しません。
そのため、乾性油の乾燥後は、
その上に、油絵の具を塗り重ねても
はじいて定着は良くありません。
(後述する加筆用ワニス「ルツ―セ」
の塗付で、塗り重ね可)


代表的な乾性油には、

リンシードオイル
ポピーオイル


などがあります。

特長としては、次の通りです。

リンシードオイル
乾燥が速い(2~3日)
塗膜は丈夫
黄変しやすい(※)

ポピーオイル
乾燥が遅い(4~5日)
塗膜の丈夫さはリンシードより劣る
黄変しにくい

(※)乾性油の特徴で、
経年や暗所での保管により
色が黄色く変色することがあります。
昔の西洋画の名画が黄ばんでいるのは
このためです。

どちらを選んでも良いですが、
私の個人的な意見としては、
黄変しにくいポピーオイルの方が
良いと思っています。
(絵の色合いが変わらないようにしたいので)

乾燥速度や塗膜の丈夫さの違いは、
体感するほどは気になりません。

揮発性油は、
油絵の具を薄めて、
描き始め段階の粗描きに使用します。

描き始め段階の粗描き


また、乾性油や調合溶き油を薄めて
流動性を調整
して描きやすくします。

揮発性油は、揮発後は、何も残らず、
絵の具を固める成分は無いので、
乾性油や調合溶き油と併用します。

代表的な揮発性油には、

テレピン
ペトロール


などがあります。

特長としては、

テレピンの方が揮発がやや速い(ペトロールは遅い)
テレピンの方が溶解力が高い(ペトロールは低い)

など、ありますが、
私が実際に使ってみて
普通に絵を描くだけなら
体感するほどの違いは無いです。

あえて言うなら、匂いの違いくらいです。
松脂を原料としたテレピンは、木材に近い匂い
石油を原料としたペトロールは、灯油に近い匂い
のように感じます(私の主観です)。

どちらを選んでもよいですが、
私は価格が安価な
ペトロールをおすすめします。

樹脂(ワニス)は、
絵肌の光沢や透明感を高めます
そして、塗膜の強度を高めます。

乾燥が速いので、
絵の具、乾性油に混ぜると、
指触乾燥を速める
効果があります。

樹脂(ワニス)には、

パンドル
ダンマルワニス
ワニス(バニス)

といった名称で販売されています。
樹脂(ワニス)の色は、薄っすら黄色いですが、
中には合成樹脂を成分とした
無色透明で黄変しないクリスタルバニス
といったものもあります(私これ使っています)。

また、樹脂(ワニス)は、
乾燥後も、油に再溶解するので、
塗り重ねた層の定着を良くします
(描画層を繋ぐ接着剤としての役割もある)

この性質から、次のような
加筆用や保護用の画用液としても使用されます。

ルツーセ・・・加筆用ワニス。乾燥した絵肌に塗ると、制作を続ける時に光沢の復元や、塗り重ねた層をつなぐ接着剤の役割となる。
タブロー・・・保護用ワニス。作品完成後の乾燥した画面に塗る。画面全体の光沢を整え、画面を保護する。

乾燥促進剤は、
油絵の具の乾燥を速めます。
油絵の具や溶き油に含まれる
乾性油自体の乾燥(酸化重合)を速めます

乾燥促進剤は、

シッカチーフ

があります。
色は透明です。

★注意
シッカチーフには、
茶色い色
をした

ブラウンシッカチーフ
シッカチーフクルトレ


といったものがありますが、
これは使わない方がよいです。

分量や扱いが非常に難しく
乾燥はかなり速いですが、
ひび割れ、剥離のリスクが
高いからです。

私は過去に使って
何度も絵をダメにして
今は使っていません。

調合溶き油とは、
乾性油、揮発性油、樹脂(ワニス)、乾燥促進剤を
バランスよく調合して使いやすくしたオイル
です。
初心者向けに各メーカーから販売されています。

調合溶き油には、

ペインティングオイル
ルソンバン

などがあります。

ペインティングオイルは、リンシードオイルがベースなので、乾燥が早く、塗膜が丈夫、黄変しやすいです。
ルソンバンは、ポピーオイルがベースなので、乾燥が遅く、黄変しにくいです。

どちらを選んでも良いですが、
ペインティングオイルの方が
速乾系、マット系、無臭系、
などラインナップが豊富です。

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ここまで基本的な画用液の説明をしましたが、
意外と種類が多いと思ったかもしれません。
でも、全部覚えなくて大丈夫です。

初心者におすすめの画用液は、
次の2種類だけです。
この2種類を併用すればOKです。

1.ペインティングオイル
2.ペトロール

詳しく説明します。

前述したとおり、調合溶き油といって、
メーカーが、使いやすいように、
様々な画用液を調合した溶き油です。
絵の具を固着させる乾性油を主成分としています。
使用量を多くすると、光沢がある画面になります。

これも前述したとおり、揮発性油といって、
描き始めの段階で使用します。
また、絵の具や「ペインティングオイル」を
薄める
場合に使用します。
揮発すると何も残らず、
絵の具を固着させる成分は含まれていないので、
ペインティングオイル」と併用します。

「ペインティングオイル」をメインで使用します。
これは絵の具を固着させる
乾性油が主成分だから
です。

油絵は、塗り重ねる絵の具の
層どうしの定着を良くするため、
下の層は乾性油の割合を低くして、
層を塗り重ねるごとに
段々と乾性油の割合を多くしていきます

ですので、使う溶き油は、
次の例のように
「ペトロール」と「ペインティングオイル」を混ぜる比率は、
徐々に乾性油を主成分とした「ペインティングオイル」の比率を高くしていきます。

(例)
1層目
ペトロールのみ

2層目
ペトロール:ペインティングオイル=3:1

3層目(最終層)
ペトロール:ペインティングオイル=2:1

※ちなみに、例は3層としているが、油絵の具は何層でも塗り重ねは可能。

※2個口の油壺に
「ペトロールのみ」「ペトロール+ペインティングオイル」
と入れておくと良い。

ただ「ペインティングオイル」のような調合溶き油は、
塗り重ねた絵の具の層どうしの定着が
良くなるように調合されています。
比率を厳密にする必要はありませんが、
絵の具の層を重ねるごとに乾性油の比率を
高くするということは念頭に置いてください。

また、次の側面もあります。
ペインティングオイルをそのまま使うと、
濃くて、光沢がギラギラします。
ですので、ペトロールで薄めて使います。
光沢を出したいなら「ペインティングオイル」を多めにすればよいです。
光沢を抑えたいなら「ペインティングオイル」を少なめにすればよいです。

乾性油や、
乾性油を主成分とする
ペインティングオイルなどの
溶き油を使わないで、
油絵の具だけで描くのは、
あまり、おすすめしません。

油絵の具には、それ自体に
乾性油が含まれているので、
絵をキャンバスに固着させることはできます。
ただ、油絵の具のみで描くと
絵の具の固着が弱く、
光沢も少ない
です。

また、絵の具を固着させる成分が
含まれていない揮発性油(ペトロール等)のみを
溶き油として使って描くことも
同じことです。

これは過去に私が
実際に失敗しています。
チューブから出したままの
絵の具だけでキャンバスに描いた絵が
5~10年ほどして、
ひび割れ、剥離を起こしてしまいました。

保管場所の気温・湿度の変化や
伸縮しやすいキャンバス(布)に描いているかどうかなど
諸条件にもよるので
必ずしも油絵の具だけで描くと
ひび割れ、剥離を起こす
というわけではありません。
ただ、リスクが高くなる
ということなんです。


でも、油絵の具の物質感を生かして
溶き油で薄めずに
厚塗りしたい場合もありますよね。

溶き油を使わないで、
油絵の具のみで描きたい場合は、
固着を補助する
ペースト状、ゲル状のメディウム等があるので
そういったものを
使うと良い
と思います。

詳しくは次の記事書いていますので、
ぜひ読んでみてくださいね。

これまで説明した画用液以外にも
様々なオイルがあります。

次のように、
乾性油を、日晒しや加熱などの加工をして
粘度や乾燥速度を高めたもの、
唐松から取り出した樹液を精製したもの
などがあります。

サンシックンドリンシードオイル
スタンドオイル
ボイルドリンシードオイル
ベネチアテレピン

これらは、描画に直接使うことは少なく、
自分で調合して、溶き油や溶剤を
作るときに使います。
オイルの調合などに興味が出てきたら
調べるのでよいと思います。

あとは、ストリッパーなどの
絵の具の剥離剤があります。
キャンバスやパレット、筆、
などの固まった油絵の具を
剥がすときに使います。
これも必要に感じたら
揃えるので良いです。

油絵の画用液について
できるだけ、わかりやすく解説しましたが
いかがだったでしょうか。

画用液の種類が多くて難解なので、
油絵をやってみたいけど、
なかなか踏み出せない。
そういう方の
手助けになれば幸いです。

油絵の具は、物質感と粘度が強く
描いていて、とても気持ちが良く
絵を描くことが楽しくなる画材です。


私は、油絵講師をやっている関係で
沢山の生徒さんを見てきましたが、
一度、油絵を始めるとハマって
長年描く方が、本当にたくさんいます。

今、このブログを見ているあなたは、
油絵を始めようと思っている、
または、
油絵を始めてみたけど
どのオイルを使えばよいのか戸惑っている
のではないでしょうか?

記事で、おすすめしたように、

ペインティングオイル
ペトロール


だけあれば油絵は描けます。

まずは、この2種類のオイルで
どんどん描いていってください

他の画用液も
興味が出てきたタイミングで
徐々に使ってみると良いと思います。

多くの方に、油絵を描く楽しさを
知ってもらえたら嬉しいです。

最後にお知らせです。
油絵を学びたいあなたへ、
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これを見ると、
油絵の描き方 基本的な手順とコツがわかります。

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